FREESTYLE SPACEを見て考えた、オールジャンルバトルイベントでのパフォーマンス内容について

お世話になっております。世界一HIPHOPからかけ離れたフリースタイルバスケットボーラー、Rayonです。

マジでPS3が楽しい! PS5じゃないです。持ってないし。今自分の中でアツいのはPS3なのです。皆様にはどうでもいいことですね。

今更になるのですが、6月27日日曜日、池袋サンシャインで行われたオールジャンルバトルイベント、FREESTYLE SPACEを見てきました。今回はその感想、考えたことについて記事にしたいと思います。

あまりいないとは思いますが、フリースタイルバスケットボーラー以外の方がこれを読んでいただいた時向けに一応念押し。私はフリースタイルバスケの畑の人間です。もう7年近くフリースタイルバスケの界隈にいるため、この記事はあくまでフリースタイルバスケ視点での話になります。身内贔屓もガッツリしますが、ご容赦ください。

まず単なる観戦者の感想として、とても良いイベントでした。ジャンル毎のトップレベルパフォーマー達による怪獣大戦争状態。テンション上がりまくりで、コロナを理由に喜んで引きこもっていた私は見ているだけなのに途中からバテていました笑。そして、私には甲乙つけられないパフォーマンスを審査員の方々はよくジャッジできるなとリスペクトです。

また、一回戦のバトル開始前、招待選手の紹介動画が流れたのも良かったです。格闘技を地上波TVで放送する時のスタイルですね。それぞれのジャンル毎のバトルイベントだと、そういうものは無い印象です。イベント来てるってことは誰が誰だかわかってるんでしょ?っていうノリなのがジャンル毎のバトルイベント。何も知らないたまたまステージ前を通りがかった一般の方でも感情移入できるようにするための大事な仕掛けです。動画では言っていなかった一言コメントをMCが読み上げるシステムも、臨場感、ライブ感を味わえました。一方で審査員が引き分けのバツ印を作ったことは、私の後ろで見ていたカップルの方々だけでなく、MCを務めるインポッシブルのお二人にも意味がわからなかった様子でした。これはストリートカルチャーにとっては常識ですが、実は一般的ではないです。これが無自覚なのは、ストリートカルチャーと一般観客とを分断することにつながりそうです。あと、フリースタイルバスケットボーラーがKAMIKAZEさんをZiNEZ(ジンジ)さん(本名かつ芸名)と無意識で呼んでいるのも良くない気がしました。KAMIKAZEというエントリー名しか知らないMCが明らかにキョトンとしていましたね。

さて、ここからはフリースタイルバスケットボーラー視点での感想。個人的に印象に残ったのは、KAMIKAZEさんの戦い方でした。端的に言うと、パフォーマンス内容が最近のKAMIKAZEさんと違うんです。POPPIN’ダンスのアイソレーションを取り入れた動きを中心に、体の動くままに任せる(ように私には見える)のが、今のKAMIKAZEさんがバトルでやるパフォーマンスです。しかし、FREESTYLE SPACEでのKAMIKAZEさんは、10年近く前に作られたKAMIKAZEオリジナル技や、誰が作ったかもわからないくらい昔からあるフリースタイルバスケのオールドスクール技を多く披露したのです。もちろんPOPPIN’スタイルも部分的に組み込んでいましたが、会場の沸かせどころは昔の技でした。個人的には最初、「懐かしい技するなー」とだけ思っていましたが、少し考えて、「今回のKAMIKAZEさんのやり方、めちゃくちゃ賢いのでは?」と思いました。

私達フリースタイルバスケットボーラーにとっては、昔の技はただの懐かしい技です。今フリースタイルバスケのバトルイベントでやっても、ある程度沸くかもしれませんが、爆沸きはしないでしょう。私達がその技を知り尽くしていて、意外性を感じないからです。だからKAMIKAZEさんはより新しさを求めて、POPPIN’などのダンス要素を取り入れました。

しかし、あの日たまたまそこにいた一般の方にとっては、昔の技も初めて見るものです。そして、昔の技の方がパッと見て何をやっているかがわかりやすい。イベント全体を通して、バトルの結果はなんだかんだで観客が沸いた回数、声量が多い方が勝っていた印象です。でも、それも仕方ないかなと思います。なぜなら、審査員のフリースタイルバスケットボーラーISSEIさんにはフリースタイルフットボールやヨーヨーの技術の細かな差についてはわからないし、フリースタイルフットボーラーのKo-sukeさんやヨーヨーパフォーマーのSHUさんにはフリースタイルバスケの技術の細かな差についてはわからないでしょう。そういう状況でバスケとフット、バスケとヨーヨーで「良さ」を比較しようとするのですから、結局印象に残ったのはどっち?という話に落ち着くんだと思います。

何が言いたいのか伝わらなくなりそうです。考えたことは、「かっこよさという価値を伝えるためには、まず技の意味を伝えなければいけない」ということです。

私は大学院で生態心理学というちょっとマニアックな心理学を学んでいるのですが、その中で学んだことの一つが、「環境には意味と価値が既に存在していて、人はその意味と価値を見出している」ことです。まだ全然理解できていないのですが、アフォーダンスという概念が根本にあって、ヒトを含む生物の周りにある物などの環境は、常に情報を発信しているというものです。面白いのは環境の情報発信は恒常的かつ一方的であること。ヒトはその情報を受け取りたくなったら受け取って、意味と価値を見出し、行動や感情の変化を起こしたり起こさなかったりするらしいです(勉強不足ですので間違った伝え方をしてるかもしれません。私の担当教授でも理解に10年かかったらしいので、私には一生かかっても理解できないと思います)。一部の研究者はこの考えを芸術にも応用して研究しています。

パフォーマーと観客の関係も、環境とヒトの関係と同じと考えられます。パフォーマーはパフォーマンスをすることで様々な情報を発信しています。そこには様々な意味、価値があります。しかし、全ての観客がその情報を一様に受け取るわけではありません。人によって受け取り方が異なります。観客によって、その意味の見出し方が違うのです。意味の見出し方の違いは今回の場合、そのジャンルに対する理解の違いだと考えられます。

例えば、今回参加していたフリースタイルフットボーラーのHiro-Kさん。彼はフリースタイルフットボールでの音ハメが非常に上手くて、私は大好きです。バトル中、リズムに合わせて頭、肩とリフティングしていました。その時、私は思わず声を上げちゃったんですが、たまたま私の周りはそうでもなかったんですね。

音ハメに気付ける人って、一般の方には少ないです(音ハメ理解の難しさの仮説については3つに分けたちょっと長い記事を書いているので、興味があれば読んでいただけますと嬉しいです。)。音ハメがわかる人にとっては「難しいリフティングを音楽に合わせてやっている」という意味で捉えますが、わからない人にとっては「難しいリフティングをやっている」くらいの意味にとどまってしまうんですね。意味がわからないモノ、コトには、価値を見出せないです。だから音ハメがわかる私にとっては「思わず声が出ちゃうほどの価値」であっても、音ハメがわからない一般の方にとっては「声を上げるほどの価値」は見出せなかったのです。トリッキングチームのVoLatricksの決勝でも似たことが起きていたと思います。トリッキング経験者と思われる集団は沸いていましたが、正直私は途中から技の差異が分からなくなっていました。「すごいんだけど、さっき見たのとどう違うんだろう?」と思っちゃって、初見ほどの衝撃、価値を見出せなかったんですね。冒頭に述べた、審査員の引き分けを示すバツ印も意味がわかる人とわからない人がいたというのも、実は同じことです。

KAMIKAZEさんの戦い方を賢いと私が考えたのはそこです。KAMIKAZEさんは言うなれば一般受けを狙いました。目隠しをしてドリブルなんて、誰が見てもスゲー!って思えることをしたんですね。また、既視感を与えない技の創作はKAMIKAZEさんの強みでもあります。その技チョイスもあって、決勝の延長まで盛り上げ続けられたのではないかと思います。

優勝したダンサーの地獄さんも、意味を伝えるのがうまかったです。ダンスで会話していることが伝わりました。タッグ優勝のけん玉パフォーマーEASY&YASUも、一般向けのショーケースに慣れている印象でした。技に既視感を感じなかったので、人に見せることを意識していることがすごく伝わりましたね。

とまあ、小難しく考えながらここまで書きましたが、難しく考え過ぎでしたね。悪い癖です。現役パフォーマーにとってはもっと話は単純です。「自分が文化を知らない一般観客だった頃の感覚を覚えているか」という話です。

ストリートカルチャーは「そのカルチャーにおけるかっこよさ」という価値を求めます。しかし、カルチャー内のかっこよさを求めるあまり、カルチャーにおける「マニアックな良さ」を掘り下げすぎることがあるのも事実です。一般観客でもわかる技って、どうしてもカルチャー内では見慣れた技になりがちで、カルチャーからの評価は高くなりにくいですからね。でも、自分がそのカルチャーに興味を持った頃、全ての技の価値を正しく判断できていたでしょうか? そのカルチャーへの理解が無いとわからない良さは、カルチャー内のプレイヤーの意見と、カルチャー外の一般観客、初心者の意見とを乖離させ、壁を作る要因になり得ます。

もちろんカルチャーの深掘りも大事です。その深みこそがカルチャーにハマる要因です。他ジャンルを評価をするのが難しい中で、GEN ROCさんはダンサーとして、全てのパフォーマンスをダンスとして捉えて審査していらっしゃいました。筋が一本通った審査によりカルチャーの深い部分を伝える役として、それはそれでとても良かったなと思っています。一方でGEN ROCさんはトウキョウダンスマガジンのインタビューで、カルチャーとしてのダンスだけでなく、オリンピック競技としてのダンスにも肯定的なようですので懐が深いのでしょう。

FREESTYLE SPACEは日本のストリートカルチャーを広げることをモットーに開催したそうです。これはフリースタイルバスケのようなマイナーカルチャーにとって非常にありがたいチャンスです。フリースタイルバスケットボーラーが自分たちの文化でやるバトルイベントは、フリースタイルバスケットボーラー自身が楽しむためにマニアックな内容となり、一般観客を受け入れにくいクローズした環境になってしまいます。開催する場所もライブハウスなど入るだけでも少し抵抗があるような場合もしばしばです。

そう考えると、FREESTYLE SPACEとジャンルごとのバトルイベントでは、イベントのコンセプトが違います。それぞれのイベントのコンセプトに乗っかってパフォーマンス内容を考えるというのは、カルチャーの発展のために大事なことではないでしょうか。カルチャーを深掘りするジャンルごとのイベントならマニアックなパフォーマンス、カルチャーを普及させるためのオールジャンルイベントなら一般向けも踏まえたパフォーマンスと、バトルと言えどもパフォーマンス内容を使い分けることができるのも、各ジャンルのトップパフォーマーの実力なのかもしれないと思いました。この使い分けの意識を、トップだけでなく我々若手も持てると、カルチャーがより発展しやすくなるかもしれません。

FREESTYLE SPACEの観戦で私が考えたことは以上です。余談ですが、イベント終了後失礼を承知でKAMIKAZEさんに「今回の戦い方賢かったですね」って伝えたら、「俺も大人になったよね」って返答がきて、「カッケー!」って思いましたね。この返答に「かっこいい」という価値を見出せる人がきっと少ないことにちょっと寂しさを感じます。

FREESTYLE SPACE開催から、もう2ヶ月経っちゃったんですね。この記事、nockさんがTwitterでバトルでの服装について言及していたのに触発されて書き始めたんですけど、色々考え過ぎて自分の考えに途中で飽きちゃったんですよね。早く上げないと価値がどんどん薄れていくのに、もったいないことをしました。

実はKAMIKAZEさんが準優勝を勝ち取ったおかげで、優勝予想キャンペーンの景品のマスクをいただいていました。KAMIKAZEさん、運営さん、ありがとうございました。次回はまず動画予選に参加しますので、よろしくお願い申し上げます。

以下リンクを色々貼ります。

まず、FREESTYLE SPACE 公式YouTubeチャンネルのリンクです。バトル動画をアップし始めました。あの日を思い出しながら見返すのが楽しみです。

FREESTYLE SPACE https://www.youtube.com/channel/UCBXi15_vAqBCFUR50FZNFCw

あと、フリースタイルバスケットボールチャンネル「スティボ」から出ていたKAMIKAZEさんの密着動画のリンクも貼ります。とても良いドキュメンタリーです。個人的には、途中で登場するHiro-Kさんの人柄に注目ですね。

【完全密着!】FREESTYLE SPACEに挑むZiNEZの裏側まで全部見せます!【永久保存】 https://www.youtube.com/watch?v=3L8KgNGKerw

最後に、途中言及した音ハメについてのリンクを貼ります。フリースタイルバスケットボーラー目線過ぎてわからない例が多いかもしれませんが、興味があれば読んでいただけますと幸いです。

音ハメがわかることについて①

音ハメがわかることについて②

音ハメがわかることについて③

みなさまにとって新しい情報となれば嬉しいです。

次回もよろしくお願いします。

Rayon

コメントを残す

Top